交差点とは

 《交差点とは》
 交通事故において交差点内の事故はかなりの件数を占めます。しかし,交差点とは道路のどの場所を指すのか案外難しい事案も存在するのです。
 交差点の意義について道路交通法2条1項5号は十字路,T字路その他二以上の道路が交わる場合における当該二以上の道路(歩道と車道の区別のある道路においては,車道)の交わる部分をいう。」と定義づけています。一見,明確なようにも見えますが,実はそうでもないのです。
 すなわち,道路と道路が直角に交わるような単純な十字路などの場合は,ここが交差点であると確定することは容易ですが,道路と道路が鋭角に交わっている場合や,道路が複雑に交わっている場合にはどこが交差点か判断することが難しいことがあるのです。
 なお,交差点の範囲の決定方式には,側線延長方式・始端結合方式・始端垂直方式・車両衝突推定方式の4つがあります。

 《交通整理の行われていない交差点とは》
 保険実務において,過失割合算定の基準となっている判例タイムズ社の 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂四版」(別冊判例タイムズ第16号東京地裁民事交通訴訟研究会 編)には,121頁以降に「信号機により交通整理の行われていない交差点における事故」の過失割合の類型事例が多数記載されています。
 では,「交通整理の行われていない交差点」とはどの様な交差点をいうのでしょうか。
 「交通整理」とは,信号機の表示する信号又は警察官の手信号等により,一定の時間一方の道路を自由に通行させて,その間他の交通を停止することを交互に反復する措置をいう。と解されています(東京高判昭和46.12.22刑月3巻12号1604頁)。
 したがって,交差点の一方に一時停止の規制が施されていても,「一定の時間,他の交通を停止していませんから」,その交差点は「交通整理の行われていない交差点」ということになります。
 また、交差点に信号機が設置されていたとしても,その信号機が黄色や赤色の点滅信号である場合には,その交差点は「交通整理の行われていない交差点」(道路交通法36条)ということになります(最高裁決定昭和44.5.22刑集23巻6号918頁)。
 一般的な感覚とは少し異なるかもしれませんね。

優先道路とは

 優先道路走行車と非優先道路走行車との接触事故においては,圧倒的に非優先道路走行車の方が過失割合が大きくなります(具体的な基本の過失割合は10:90です。)。
 では,優先道路とはどの様な道路でしょうか。
 道交法36条2項によると優先道路とは「道路標識等により優先道路と指定されているもの及び当該交差点において当該道路における車両の通行を規制する道路標識等による中央線又は車両通行帯が設けられている道路をいう。」とされています。すなわち,
@優先道路として指定する道路に指示標識「優先道路」を設置し,優先道路と交差する道路の手前に,規制標識「前方優先道路」又は「前方優先道路・一時停止」を設置して規制するものと,
A道路標示により中央線又は車両通行帯が交差点の中まで連続して設けられていることによって直ちに優先道路としての取扱をうけるものとの2つがあります。P2200141.JPG
 Aを簡単にいうと,中央線(実線,破線は問いません。)又は車両通行帯が交差点内にも書かれている道路は優先道路です。
 よく,一時停止の規制(「止まれ」の標識)有無で,優先道路非優先道路の判断をする人がいますが,厳密には(道交法上は)間違っています。

明らかに広い道路とは

 「明らかに広い道路」道路交通法36条2項)とは,交差する道路の一方の幅員が他方より明らかに広い道路を言いいます。
 最三小決昭45.11.10は「交差点の入り口で徐行状態になるために必要な制動距離だけ手前の地点において,自動車の運転者がその判断により,道路の幅員が客観的にかなり広いと一見して見分けられるものをいう。」と判示しています。
 上記最高裁の規範からすれば,現場調査をしなければ,一方が「明らかに広い道路」なのか分からない場合があるということになります。
 なお,最高裁昭和47年1月21日判決(判時659号95頁)は,当該交差点が広路狭路(つまり,一方が明らかに広い道路)にあたるか否かは,歩道を除いた車道部分で比較すべき趣旨の判示をしています。

徐行

 道路交通法において,しばしば登場する用語として「徐行」があります。
 道路交通法において「徐行」とは,「車両等が直ちに停止することができるような速度で進行することをいう。」と定義されています。抽象的な定義のように思われますが,道交法の規定する「車両等」には様々な種類のものがあり(自転車から大型トラックまで)ますので,やむを得ないと思います。
 具体的に自動車では,8キロ〜10キロではないか。と解釈している説があります。
 なお,徐行すべき「場所」について道交法は各種規定していて,代表的なものとして42条があります。
42条には徐行すべき場所として,
 @ 道路標識等により徐行すべきことが指定されている道路,
 A 左右の見通しのきかない交差点に入ろうとし,又は左右の見通しがきかない部分を通行するとき(当該交差点において交通整理が行われている場合及び優先道路を通行している場合を除く),
 B 道路のまがりかど附近、上り坂の頂上又は勾配の急な下り坂を通行するとき。
の3つのパターンが規定されています。
 交通事故で特に問題となるのが,Aのパターンです。このAの規定は,優先道路通行車両の運転手には適用されませんが,優先道路ではない「明らかに広い道路」を通行する運転手には適用されます注意が必要です。

追越し

 追越しという言葉は、日常用語としても良く使われます。道路交通法においても、「追越し」の意義は定義されていて、「車両が他の車両等に追いついた場合において、その進路を変えてその追いついた車両等の側方を通過し、かつ、当該車両の前方に出ることをいう。」とされています。
 この定義に沿って具体的事例を検討してみます。
@ 第二車線を走行中の車両(A車両)を第三車線を走行していた車両(B車両)がA車両の側方を通過し、前方に出た場合。
 この場合、一般的には、追い越しと思えるのですが、道交法上の「追越し」にはなりません。なぜなら、B車は進行していた進路を変えてA車の側方を通過したのではなく、条文の文言と一致しないからです。ちなみにこのような走行は「追抜き」とされています。
A 一般道の第二車線を走行中の車両(A車両)を同じく第二車線を走行してきた車両(B車両)がA車両との距離が100mある時点で進路を第三車線に変え、A車両の側方を通過し前方に出た場合。
 
この場合も道交法上の「追越し」とななりません。なぜなら、一般道において、前車の100mも手前で進路を変えた場合、条文の「他の車両に追いついた場合」とはいえず、条文の文言と一致しないからです。

追越しを禁止する場合及び禁止する場所

 道路交通法29条は,以下のように追越しを禁止する場合(二重追い越しとなる行為】を規定しています。

 後車は,前車が他の自動車又はトロリーバスを追い越そうとしているときは,追越しを始めてはならない。

 すなわち,追越しをしようとする車両(車両なので,原動機付き自転車と自転車を含みます)は,前を走行している車両(車両なので,原動機付き自転車や軽車両を含みます。)が自動車又はトロリーバス(原動機付き自転車や軽車両は含みません。)を追い越そうとしているときは,追越しを始めてはいけません。

 ちょっとややこしいですが,例えば,原動機付き自転車が自転車を追い越そうとしている時に,自動車が当該原動機付き自転車を追い越しを始めても,道路交通法29条には違反しないことになります(原動機付き自転車が追い越そうとしているのは自転車であって,自動車又はトロリーバスではないからです。)。

 道路交通法30条は以下のように追越しを禁止する場所を規定しています。

 車両は,道路標識等により追越しが禁止されている道路の部分及び次に掲げるその他の道路の部分においては,他の車両(軽車両を除く。)を追い越すため,進路を変更し,又は前車の側方を通過してはならない。
 一 道路のまがりかど附近,上り坂の頂上附近又は勾配の急な下り坂
 二 トンネル(車両通行帯の設けられた道路以外の道路の部分に限る。)
 三 交差点(当該車両が第三十六条第二項に規定する優先道路を通行している場合における当該優先道路にある交差点を除く。】,踏切,横断歩道又は自転車横断帯及びこれらの手前の側端から前に三十メートル以内の部分

 

横断歩道・自転車横断帯における歩行者・自転車の優先

 信号機のない横断歩道を横断し始めたとき,走行してきた自動車が加速してきたり,クラクションを鳴らすなどして,横断を妨害されたことがありませんか。
 この自動車の運転手は道交法違反を犯しています。自転車の運転手が同様のことをしても道交法違反です。

 道交法38条1項は,横断歩道等を通行する歩行者等を保護する規定で,具体的には次のように規定されています。「車両等は,横断歩道又は自転車横断帯(以下この条において「横断歩道等」という。)に接近する場合には,当該横断歩道等を通過する際に当該横断歩道等を横断しようとする歩行者又は自転車(以下この条において「歩行者等」という。)がないことが明らかな場合を除き,当該横断歩道等の直前(道路標識等による停止線が設けられているときは,その停止線の直前。以下この項において同じ。)で停止することができるような速度で進行しなければならない。この場合において,横断歩道等によりその進路の前方を横断し,又は横断しようとする歩行者等があるときは,当該横断歩道等の直前で一時停止し,かつ,その通行を妨げないようにしなければならない。」
 したがって,車両等(自転車を含みます)が,前方の横断歩道を横断し始めた歩行者の妨害してはいけないのです。

 また,38条は2項で,信号機等により歩行者の横断が禁止されている横断歩道を除く横断歩道等又はその手前の直前で停止している車両等がある場合,その停止車両の側方を通過して前方に出るときは,車両等は一時停止しなければならないとして,横断歩道等の歩行者を保護しています。

 さらに38条3項では,「車両等は横断歩道等及びその手前の側端から前に三十メートル以内の道路の部分においては,第三十条第三号の規定に該当する場合のほか,その前方を進行している他の車両等(軽車両を除く)の側方を通過してその前方に出てはならない。」と規定して歩行者等を保護しています。 

路側帯

 道路交通法は2条1項3号の4において,路側帯とは「歩行者の通行の用に供し,又は車道の効用を保つため,歩道の設けられていない道路又は道路の歩道の設けられていない側の路端寄りに設けられた帯状の車道の部分で,道路標示によって区画されたものをいう」と定義されています。
 路側帯の設置は,公安委員会が道路標示を設けて行いますが,道路管理者が設置した区画線(車道外側線のうちで,歩道の設けられていない道路又は歩道の設けられていない側の路端寄りに設けられた車道外側線は,路側帯とみなされています。
 なお,「路肩」とは,道路の主要構造部を保護し,又は車道の効用を保つために車道に接続して設けられている帯状の部分をいいます。

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